(宇宙人って、なんだよ) このこは、多感な中学生である。 このこは、日曜日の夕食後の時間帯に放送される、4,5年前のハリウッド映画のせいでノンレム睡眠に陥るまでの数時間を 思考に費やさねばならなくなった。その表情は、至って普通に、ただ近視の進んできた目を細め、狭いリビングで一人テレビを見ている。 (だから、宇宙人って) このこは、脚本家が書いた文字をいかにもといった感じで読んでいる映画俳優の言葉に、いちいち反感を覚える。 その度にちくりとこのこの胸をさす痛みは、細い針である。しかもこのこの胸にはその針が日に日に増えていき、見るにもたえぬ無残なものへとなっていく。 が、このこは今のところ、それがいいと思っている。それでいいと思っている。 テレビ画面がCMへと変わった刹那、このこは一度ぎゅっと目を閉じ、そして必要以上に大きく開けキッチンの冷蔵庫へと向かっていった。 (人間てのはしょせん、) このこは、冷蔵庫の中の飲みかけのペットボトルのジュースを見つめながら、思う。 そのジュースは、そのこの部屋で一生を終えた。 |